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最高裁判所第一小法廷 昭和43年(オ)297号 判決 1969年3月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人水崎幸蔵の上告理由第一点、第二点について。

所論の点に関する原判決の事実認定は、その挙示する証拠に照らし是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立つて、適法になされた原審の証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用できない。

同第三点、第四点について。

本件貸金債務は昭和三一年四月二八日の経過と共に消滅時効が完成したことは、原判決の適法に確定するところである。

また、上告人が昭和三四年九月主債務者たる訴外会社の代表取締役兼連帯保証人として被上告人に対し本件貸金債務の存在を認め、右貸金元金を金五〇万円の限度において支払う意思を有することを明示した旨その他原判決の事実認定は、その挙示する証拠に照らして是認することができるし、右事実関係に基づいて訴外会社及び上告人は昭和三四年九月本件主債務及び保証債務を元金五〇万円の限度において承認したものであるとする原判決の認定を支持することができる。

思うに、主債務の消滅時効完成後に、主債務者が当該債務を承認し、保証人が、主債務者の債務承認を知つて、保証債務を承認した場合には、保証人がその後主債務の消滅時効を援用することは信義則に照らして許されないものと解すべきである。(昭和三七年(オ)第一三一六号同四一年四月二〇日大法廷判決、民集二〇巻四号七〇二頁参照。)これと同旨の見解に立ち、その確定した事実関係に基づき上告人の所論消滅時効の主張を排斥した原判決の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、原判決を正解せず、また、原審の認定にそわない事実を主張して、適法になされた原審の証拠の取捨判断、事実の認定、それに基づく正当な判断を非難するに帰し、採用することができない。

同第五点について。

所論摘示の原判決の判断の正当であることは既に説示した通りであるし、上告人が原判決認定の通り承認した本件貸金債務元金五〇万円の内の金三〇万円について、支払期後であり、かつ、右債務承認の後である昭和三四年一〇月一日以後完済まで日歩一〇銭の遅延損害金を支払うべきものであるとする原判決の判断は、その確定した事実関係に基づき正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて正当な原判決を非難するに帰し、採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

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